シャフト連載記事 vol.2機械加工メーカーから見た、電動化に向けた次世代シャフト加工技術の提案『マグネット内蔵シャフト編』
シャフト
シャフト連載記事 vol.2
こんにちは。都筑製作所の菊地と申します。
都筑製作所は自動車足回り部品の製造を得意とする、加工メーカーです。
昨今の自動車EV化の流れに合わせ、当社においてもローターシャフトについてのお問い合わせが大変多くなっています。
この記事では「シャフト」をテーマに定期的に加工技術情報についてご案内いたします。
連載2回目の今回は、『電動化に向けた次世代シャフト加工技術の提案』をテーマに、マグネット内蔵シャフトをご紹介します。皆様の課題解決のお役に立ちましたら幸いです。
マグネットを内蔵するシャフト『MIRS』のご提案が可能
マグネット内蔵シャフト『MIRS』はシャフト内部にマグネットを組み込み回転子として機能させるシャフトです。
マグネット内蔵シャフト『MIRS』(Magnet Integrated Rotor Shaft)
当社では電動ターボやFCスタック冷却用モーターに使われるマグネットを内蔵するシャフトを数多く手掛けています。
様々なご要望に対応できるノウハウも併せて蓄積しております。シャフトの工法についてもご提案が可能です。ぜひお気軽にご相談ください。
マグネット内蔵シャフト『MIRS』の構成部品
MIRSを構成する部品は主に「磁石」「保護管」「シャフト」の3部品から構成されています。
マグネット内蔵シャフト『MIRS』
「磁石」について
磁石の形状
- 使用される磁石の形状は、中空または中実磁石が主になります
- シャフト部が磁石の中を貫通するタイプと、非貫通タイプで形状が変わります
加工
- 磁石は脆性材のため、大きな切削負荷を掛けられません。主に研削加工が用いられます
- 研削加工部位は、中空磁石の場合は内外径、端面の研磨、中実磁石の場合は外径と端面の研磨を行います
- 要求される精度が厳しく、簡単に欠け割れが発生してしまうため、円筒研削盤等を利用します
- 当社は割れを発生させない研削条件等、ノウハウを多く蓄積しております
- シャフトとの勘合精度を重視する場合は、円筒研削盤、内径研削盤、センタレス研削盤、必要に応じて平面研削盤を使用します
- また、超精密加工を施す場合は超精密平面研削盤を使用します
- 磁石素材の塊から形状を切り出す場合はワイヤー放電加工機を使用します
- 保護管に磁石を圧入する際の導入部形状(面取り・R等)は成型砥石を用いますが、必要に応じて円筒研削盤、センタレス研削盤で形成します
- サマリウムコバルト、ネオジムなどの磁石材質・特性に応じた最適な砥石を用いて加工を行います
- 社内で材料毎の研削ノウハウを保有しています
マグネット内蔵シャフト『MIRS』
「保護管」について
保護管の形状
- 形状は磁石を覆うため、主に筒形状を用います
保護管の材料と加工
- 保護管の主な材料は非磁性体として、チタン合金、ニッケル合金、ステンレス等が多く用いられます
- 保護管の加工は旋盤、内径研削盤、外径研削盤が使用されます
保護管と磁石の結合
- 保護管へ磁石を圧入する際の導入部、ガイド部に関する最適な形状および寸法に関するノウハウを社内で蓄積しております
マグネット内蔵シャフト『MIRS』
「シャフト」について
シャフトの形状
- シャフトは円筒で、形状は一体型、分割型等、様々な形状に対応する事が可能です
- レゾルバ取り付け部の形状加工も要求精度に合わせ可能です
シャフトの加工
- シャフトの加工は旋盤、内径研削盤、外径研削盤が使用されます
- 加工精度はASSY時の初期バランス性能を向上させるため、構成部品の精度を最大限に求めています
シャフトの材料
- シャフトの材料はクロムモリブデン鋼、ステンレス鋼、チタン合金、ニッケル合金等が主に使われます
- 当社が培ってきた難削材加工技術をシャフト加工へ応用しています
マグネット内蔵シャフト『MIRS』
磁石と保護管の結合
圧入による結合
- 保護管内へ磁石を圧入し結合させる場合、最適な圧入荷重・圧入速度を管理し、圧入時の割れ欠け無く安定した組付けが可能です
焼き嵌め結合
- 圧入結合以外で焼き嵌めによる結合も可能
- 焼き嵌めの温度、内径拡大の組み合わせをノウハウとして蓄積しております
- 最適な結合条件の提案が可能です
接着結合
- 接着剤の塗布量・塗布方法や混合液体タイプの攪拌方法、塗布後の温度や結合時間の管理を行い、結合強度を確保しています
マグネット内蔵シャフト『MIRS』
エンドプレートと磁石の外研
共加工
- 硬さが異なる2つの材質では、砥石が変摩耗し精度が求めにくく、砥石の摩耗量が均一になる研削条件をノウハウとして蓄積しております
- 表面粗さ、外径寸法、円筒度等の寸法精度を確保できます
マグネット内蔵シャフト『MIRS』
MAIN ASSY
組立後の仕上げ加工
- 超高回転に対応するには、シャフトセンターに対する外径の同軸精度を確保する必用があります
- 組立後の旋盤加工・円筒研削加工で要求精度を確保します
- 要求精度が高い部位は必要に応じ全面加工で対応いたします
回転バランス
- 部品単体の場合、組立後の精密加工で回転バランスの調整を行います
- バランス測定には、動的バランス測定器を用いて検査と調整を行います
軸受け部の溶射/HVOF高速フレーム溶射
- 軸受け部の耐摩耗性向上が必要な場合は、表面処理としてHVOF(High Velocity Oxygen Fuel)高速フレーム溶射も実績があります
マグネット内蔵シャフト『MIRS』
着磁
- ご要望に応じて着磁、着磁後のモーター組立も可能です
ローターシャフトの製造会社をお探しの皆様へ
当社はローターシャフトメーカーとして各種形状のシャフトが製作可能です。
各種ノウハウによって試作、量産に関わるリードタイムの短縮が可能です。
加工メーカーならではの視点で、試作から量産に至る様々な場面でローターシャフトの提案ができます。
モーター開発においてのパートナーとしてご協力させていただきます。ぜひお気軽にご相談ください。
次回の記事予定
次回は『中実シャフトの造りの提案』です。
Vol3では中実シャフトの加工方法をメーカーならではの視点で提案させて頂きます。ご期待ください。
マグネット内蔵シャフトの試作についてお気軽にご相談ください
マグネット内蔵シャフトの試作を相談する
ダウンロード資料をご活用ください
軽量モーターシャフト量産についてもぜひご相談ください
下記の課題にお応えいたします。
- 軽量化を目的とした軸物(シャフト)中空化
- 削加工部位を減らしコストダウン
- 2部品構成を一体化して強度アップ
- 軸物(シャフト)中空化により、内部に付加機能を持たせる
都筑製作所は複雑形状、高精度加工も得意領域です。
中空軸塑性加工設備の導入に合わせ、軽量化などの技術開発にも取り組み、仕様提案でお客様のソリューションに貢献いたします。軽量モーターシャフト量産について、次世代EV用ローターシャフト加工技術についてなど、ぜひお気軽にご相談ください。
シャフト・軸物の製造加工ソリューション