「2025年VISION」を話そう Vol.2走り始めた「2025年VISION」。自社開発製品NT0001の試作機完成。
2年目で見えてきたもの、これからの課題についてプロジェクトメンバーが語ります。(2019年収録)

2025年VISIONとは

都筑製作所では、近い将来に会社のありたい姿を挑戦目標として具体的に描いた事業方針「2025年VISION」を進めています。
創業以来のQCD追究に基づいた量産技術をベースに、「材料メーカーとの共同開発」「素加工一貫」と事業を展開し、宇宙・航空機産業への進出を視野に入れた「開発・提案型」のものづくり会社への進化を目指しています。

プロジェクトメンバー

  • 代表取締役社長 栗田有樹
  • 経営企画室 吉池康彦
  • 資材課 小林恵二
  • 企画推進課 河西剛弥
  • 管理部 大村賢司
  • 製造 清水博輝
  • 経営企画室 菊地哲也
  • 経営企画室 森野香

スタートから2年。見えてきたもの。

栗田

2015年に私が社長に就任して、これから都筑製作所をどうしていくのかという思いから生まれたのが「2025年VISION」です。2017年には自社製品開発のためのNT2025プロジェクトメンバーが集まり、実際に活動が始まりました。小型モビリティの基礎知識を学ぶことをテーマに参加したEne-1グランプリ(※)が活動の第一弾になります。
(※単三形充電池を動力源とした競技専用車両を自作して、タイムや順位を競う次世代エネルギーカーレース)

吉池

2017年11月25日にEne-1グラプリに参加して、それまで触ったことのなかったモーターやカウル構造、金属以外の素材などを実体験で学ぶことができました。その体験や知見を踏まえて、小型モビリティにおける開発の方向性をメンバーで話し合いました。いろいろな意見が出ましたが、介護の分野で取り組んでみようと決まったのが2018年の2月でした。そこから自社製品開発のプロジェクト「NT2025」が動き始め、試作機が2019年の3月に完成しました。

清水

この一年は本当に早くてあっという間でした。Ene-1グラプリを経験して、次のステージを皆で検討して「モビリティ」「モーター」がテーマになって。そのためには何をすべきか。喧々諤々の中でどんどん進んで、皆の力で試作1号機の試作機に辿りつけた。とても充実した一年でした。

インタビュアー 私見ですが、清水さんは都筑製作所という会社を満喫している雰囲気があります。

清水

そうですか(笑)。たぶん元からの性質だとは思います。私は製造部なので通常はなかなか他の部署の方たちと関わることも難しいのですが、メンバーの任命というきっかけを作ってもらい、横のつながりを持たせてもらったのは本当にありがたかったです。

大村

私は総務なので後方支援の役割があります。この2年で自分たちが足りないもの、分からないものがだいぶ見えてきました。人もCADもノウハウも何が足りず、何が必要なのか。きちんと整理して一つずつ対応していければ、環境整備を加速させられるかなと思っています。

河西

Ene-1グラプリにレーサーとして参加して、リタイアという結果で終わって…。悔しかったです。それから一年で試作1号機を皆で形にしたことがすごいなと思っています。ただ、技術的にまだ貢献できているところは少ないので、もっと制御プログラムを学ばなくてはと思います。

吉池

これから一生懸命修行するんだよな。(笑)

プロジェクト「NT2025」

社長の栗田が持っているのがNT2025試作1号機。シニア向けの自操用電動車イス

インタビュアー NT2025に大きく関わっている新メンバーはどんなタイミングで参加したのでしょうか。

栗田

森野さんは2018年の10月に、菊地さんは2019年の2月に加わっていただきました。人材補強には苦労しました。機構に詳しい森野さんに辿り着くまでに大変で、大村さんにお願いして多方面に声をかけてもらいました。菊地さんは私が声をかけたのですが、前職で自社製品開発をやっていた方なので、NT2025にぴったりだと思いましたね。

森野

参加前にNT2025プロジェクトのお話を聞いて、「楽ではないだろうな。大変なことを始めるんだな」と思っていましたが、入ってみたらもっと楽じゃなかったです(笑)。でも、やるしかないなと。

菊地

入社前に栗田社長から「2025年に向けて自社製品を作る」と聞いて、素晴らしいと思いました。NT2025は製品開発の手法を都筑製作所が身につけることも重要な目的でしたので、試作機の製作では開発の手順を一から追っていくということを大切にしました。目指す位置があるので、やりがいがあります。

栗田

坂城町の(有)ヨシカワから𠮷川工場長も外部メンバーとして2018年6月に参加いただきました。現社長は本業以外に小型エアプレーンの推力モーターを製作するようなユニークな方で。新しいことに取り組むことは素晴らしいと言っていただけました。

吉池

試作1号機は2019年の3月に完成しました。製品の詳細はまだ言えないのですが、シニア向けの自操用電動車イスのジャンルになります。ジョイスティック型で、2WAYなのが特徴です。

小林

2018年の2月にモビリティのテーマを介護系にしようと決めて、3月には知り合いの介護施設に何人かで取材に行きました。利用者さんや職員さんにニーズや課題をヒアリングして、皆でアイデアを出し合いましたね。

吉池

「このアイデアはいいな」と思っても、調べたらすでに他社がやっていたり、何かしらの課題があって製品化されていないことが分かったりして、製品開発の大変さを知りました。5月に構想がまとまり、ヨシカワさんに設計をお願いしたのが6月。𠮷川工場長にも会議に参加いただいて、3Dモデルでの説明をメンバー全員で聞いて詰めたりしました。11月に図面ができたのですが、12月頭に大きな手直しが入りました。設計をお願いする前にもっと仕様を詰めておくべきだったというのが反省点です。

菊地

問題を修正をして、「これで行こう」となったのは1月の末でした。部品や加工の発注先をどこにするかなど吉池さん、森野さんと毎日協議しましたね。

森野

加工や製造をお願いできそうな会社をとにかく調べて見積もりをお願いしました。今回の試作機では都筑製作所としての部品がないのが残念でしたが、完成した試作1号機を見て、メンバーの皆が嬉しそうな顔をしているのが印象的でした。

吉池

3月20日は試作1号機が初めて走った日です。

小林

試作1号機を始めて見たときは感動というか、一歩前に踏み出したという感じがして。改めてやっとスタートを切れたと思いましたね。

これまでの成果と社内の変化

栗田

NT2025プロジェクトで形になった姿が成果そのものと思っています。あの形が生み出されるまでメンバー皆で喧々諤々やったこと、試作1号機に至るまでの知見が社内に積まれたこと、その一つひとつが成果です。

吉池

社内開発に挑戦していることは人材募集、特に技術系の方に興味を持ってもらえるという点もあります。いずれ社内に開発組織ができたら、新入社員の研修の場としても有効に使いたいと思っています。

インタビュアー プロジェクトを通して社内外に何かしらの変化はありましたか。

栗田

社内の土壌を変えることが目的の一つでしたからそれは大きなテーマです。牛歩ではあるけれど、NT2025に関わりたいと伝えてくれる社員さんが出てきたり、お取引先から「面白いことを始めましたね」と言っていただいたりするようになりました。

清水

NT2025という「大きなきっかけ」を作ってくれたことが、社内に大きな変化を生んでいると思います。ただ、まだ浸透はしきっていないですね。「今は何をやってるの?」と聞かれることもあります。

小林

そうですね。自分の中では定着したのですが、社内の変化はまだこれからだと思います。

河西

試作1号機を通して、社内の関心もより上がるのではと感じています。できれば少しでも社員皆さんと進めていきたいと思います。

大村

私の父親が都筑製作所のWebサイトをたまたま見て、「お前、プロジェクトやってるのか」と言ってきたのですが(笑)。家族にそのように言われたことは、意外なほど自分のモチベーション向上に大きかったです。

森野

試作1号機の部品や加工を外部に依頼すると、「何をやっているだろう?」とやはり皆さん興味を持たれますね。物を作っている人たちですから。機密保持契約を結び、詳しい話をするととても前向きに聞いてくださいます。いずれそういう人たちともっと仕事ができればいいなと思います。協力して頂くお取引会社の存在はぜったい必要ですので。

栗田

都筑製作所には社員の挑戦をサポートする「提案型チャレンジテーマ」という取り組みがあるのですが、あまり活かされていませんでした。2017年のEne-1グランプリ参加以降、社員さんがHONDAエコマイチャレンジ2018(※)の全国大会に出場するなど、自分の趣味を生かしたいという声も出てきた。ゆっくりでも動き始めたことも効果のひとつだと思っています。
(※Honda 4ストロークエンジンを使用した燃費を競うモータースポーツ)

清水

2019年もEne-1グランプリに出場します!
今年は鈴鹿サーキットです。モーター改良に技術課に協力していただき、目標の完走を達成したいです。

課題とこれから

インタビュアー 試作1号機の開発はどう着地させるのでしょうか。

吉池

各施設や社員さん含め多くの方に試作1号機のモニターをお願いする予定です。実際の声を集め、反省点などをまとめて、2019年8月を目途に一旦終了します。

菊池

2号機も企画して検討したのですが没になりました。今は3号機に取組んでいます。福祉モビリティをテーマに検討中の段階です。

栗田

試作1号機では、製品開発において都筑製作所に足りないもの・ことの課題が具体的に分かってきたのは大きいですね。

吉池

山を一つ越えたら、次の山が見えてきて。しかも、その繰り返しのような。自社製品開発はとても高い山だということがよく分かりました。

栗田

高い山をどう乗り越えるのかは大きな課題です。元々、プロジェクトのメンバーは専任ではなく、通常業務との兼任ですが、いずれ限界がきます。3号機の開発に向けて、外部からも人を引き入れ、2019年の秋には専任体制を作りたいと思っています。

森野

メーカーとしての組織を作るという大命題がありますので、メンバー皆さん一人ひとりが未知の会社や知らない分野に突っ込んでいってほしいと思います。役割や権限も明確にしてスピードを上げたいです。

栗田

NT2025はこれからが正念場です。マーケットインで製品開発できなければメーカーにはなれない。
未知の領域は苦しいですが楽しみでもあります。自社の屋台骨を盤石にし、開発費用を捻出していきたいと考えています。

インタビュアー 最後に、これからの一年をどんな年にしたいか聞かせてください。

栗田

真の意味で、開発の最初の一歩が生まれる年にしたいです。

菊地

「2025年にメーカーになる」という目標実現の基盤となる一年にしたいと思います。モノありきではなく、お客様ありきになる一年にしたいと思います。

清水

試作1号機を通して、開発は世の中に製品を出していくものであり、そのために安全性や性能等を詰める必要性を痛感しました。この一年はお客様に辿り着くための一年だと思います。大切な一年にしたいです。

大村

組織作りが本格的に動いていきます。現場をサポートする側の人間として、働きやすさや環境づくりに着手して進めていきたいと思います。

小林

世の中に必要なもの。事業になるもの。その具現化が3号機から本格的に始まります。マーケットインとして市場調査等が重要になるので、自分もそこに協力していきたいと思います。

河西

敢えて言えばこれまではプロダクトアウトで好きなものを作れていましたが、いよいよマーケットインとしての製品開発となります。自分の書いたプログラムコードが基盤に載せられるように頑張りたいです。

森野

製品開発には「どうしてもこれを作りたい!」という情熱、核が必要になります。都筑製作所に製品開発の基盤をつくる一年にしたいと思います。

吉池

これからの方向を決める大事な一歩になると思います。この一年でどれだけ整備できるか。来年の種蒔きを含めて、様々な準備と行動を起こしていきます。